ずいぶん前から、ルーロー飯のことは知っていたが、なかなか食べに行く機会がない。香港料理なのか台湾料理なのかもわからないので、ネットで調べたが、はたして、どちらにでもあるようでないようで。台湾料理店に行けばありつけるのではと水道橋あたりにあたりをつけて、何度か行ってみたのだが、結局、王将のテイクアウトにしたり、家族の好物の、唐揚げにしたりで、ひと月ふた月があっという間に過ぎてしまう。
唐揚げ屋は近頃、至る所にできていて、近所にも何軒かあるのだが、元タピオカ屋だった店が唐揚げ屋にいつの間にかなっていたりして、同じ経営だったりすると唐揚げもたいしたことはないんじゃないかと思い、どうせ食べるなら、他とは違う少しは手の込んだ唐揚げが食べたいと思い、こちらも、簡単には、手を付けられなくなっていて、またの日にしようということになる。
食べ物にそんなにこだわりがあるわけではないのだが、どうせ食べるならうまいものをと、あれこれネットで検索するが、何軒か検索した店も、コロナ禍で、休んでる店もあるみたいだし、時間短縮で、思った時間に行くことができない。
そんな時に、息子が何となくみつけてきた店があったので、「今日はここにしよう」と、珍しく迷いを断ち切って、行ってみた。
九段下にある「五坪」という店で、マップ頼りに行ってみたら、以前中華料理店があった店で、以前、飯田橋に事務所があったときに、一度入ったことがある。飯田橋駅の近くにもある店で、もう何十年も前に入ったことのある店。「ああ、ここも潰れたのか」と、感慨ひとしおだったが、きめたことはきめたことだし、息子ももう唐揚げモードに入っていたので、仕方ない、ボクの感慨は、脇に置いておいて、新しくできた店に、唐揚げを買いに行ってもらった。
この店では、唐揚げのことを「ザンギ」と呼んでいて、ああ、北海道式の唐揚げかと好感をもてたのだが、それは、北海道で食べた唐揚げが、ザンギと名を変えて出ていて、肉に味が染みていて、おいしかった記憶があるためだ。
ボクは、「ザンギ」を探していたのだと思い出し、それなら、今日は、腹いっぱい食べてみようと、20個ばかりを息子に買いに行かせて、今日は腹一杯食べようとルーロー飯のことも忘れて、持ち帰った。
家に帰って早速食べたのだが、なるほど「ザンギ」は、唐揚げとは違っていて、味が染みていて、うまい。しかも一個一個が、やたらと大きく、これであの値段では、安いなとか言いながら、二個をたてつづけに食べたら、もういけない。腹がもたれてきたのだ。胃か?
最近、油物を食べると、すぐに腹がもたれて、一日中、こなれてないような、いやな気分になる。
みんなは、むしゃぶり食べているのだが、ボクは早々に離脱してみんなの食べるのを眺めるだけにした。
唐揚げは、せいぜい二個までが今のボクの限界と知り少し寂しくなった。
それでも、何日かした後、またルーロー飯のことが頭をもたげてきた。
飯田橋に前から行きたかった香港料理の店があるので、またもや家族で、そこへ行ってみたのだが、果たして、メニューにはない。しかたがないので、あきらめて、ほかの料理をいくつか注文して食べた。何を食べてもおいしいのだが、当てが外れてしまい、気持ちの整理がつかない。なんで、いまやどこでも食べられるはずのルーロー飯が食べられないのか?
一晩悩んだ。
でも、翌朝になると、ルーロー飯のことはすっかり忘れていて、別の料理や、ラジオ番組や、映画とかに頭が向かっいて、何日目かの夜に、ふと見たYouTubeで、ルーロー飯に再会した!
そうだ! これを棚上げにしていては何もなしえない!
で、豊洲の「アオキ」に向かい、とにかく食材を買い込んだ。なかなか店に行けないなら、自分で作るしかない、そう決めたのだ。
ルーロー飯に欠かせないのは、五香紛というスパイスらしい。(別になくてもいいのだが)それを加えてみると、なるほど、台湾だか香港だか中国だかの料理の香りがしてくる。
オイスターソースが家にあったで、入れてみると、まさにこれがルーロー飯か! という味になった。
小ぶりの丼に、ルーローをかけて、奥さんに買ってきてもらった青梗菜の茹でたのを添えて、おしんこがなかったので紅ショウガも添えた。
がぶりと一口食べて感動した。
これだよ、ボクの求めていたルーロー飯は! これなんだ!
と、ひとり唸った。
しかし小丼一杯がやっとだった。
唐揚げと同様か、それ以上に腹にもたれてきたのだ。
500グラムほどのばら肉のかたまりで作ったので、何食分かはある。はたしてこれをどうしたものか。
今もびっしりとラードの白い層の浮いたルーローは、冷蔵庫にあるが、息子が沖縄に帰った今は、息子に食わせるわけにもいかず、仕方ない、いつか食べることになるのだろうが、やはり、一度は店で食べてから、作るべきだったと思う。
果たして、これがルーロー飯というしろものなのかもわからないが、うまいことはうまい。
だから、これはルーロー飯でいいのだが、確実に、腹にもたれる。小丼がせいぜいなのだ。バラ肉500グラムは、多すぎる。
× × ×
「なぜ君は総理大臣になれないのか」を観た、
17年間撮り続けたドキュメンタリー。当たり前が当たり前でなくなった時代に、小川淳也の生き方は、清々しい。腹にもたれない映画を久しぶりに観た。
オリパラの記録映画はどうなるのか?
沢木耕太郎は、東京五輪を果たして書くのか?
どちらかというと、後者のほうに、ボクは、興味がある。
長年、オリンピックと対峙してきた沢木さんが、コロナ禍のしかも緊急事態宣言中、毎日たくさんの死者が出ている中で強行した、オリパラ。国民の70パーセントが反対する中、開催した、オリパラ。それにたいして、どのような文章を書くのか、ボクは想像ができない。