病院の日ほど、気分が悪い日はない。
ましてや、数値が悪かったりすると、落ち込む。
でも、もう「来るものは来るのだ」と諦めている。
諦めているから、診察結果でその日の気分が悪くなることはなくなったのだが、今日のように、段取りの悪い、診察には、本当に頭に来る。
何はともあれ、翌日には、スペインに行かなければならないのだ。
スペインはグラナダ。
出来て5年目の映画祭だから、まだまだ若い映画祭だ。それほど知名度があるわけじゃない。
招待の誘いがあったものの、どうしようかと数日考えさせてもらった。
スペイン行きは直行便がない。
おまけに、マドリッドを経由しなければ地方都市のどこにも行けない。
以前、ブラジルに行ったことがあるが、こちらも、すべての都市は、サンパウロに一旦行って、乗り換えなくてはならない。
ブラジリアは首都なのに、やはりサンパウロで乗り換えだ。しかも、乗り継ぎに、8時間も待たされた。
その時は、交流基金の人がホテルをとってくれたので、仮眠をすることができたのだが、リオに行ったときは、空港で散々待たされた。
サンパウロには当時まだ、喫煙のコーナーがあったので、何とか、禁断症状になることはなかったのだが、辛いことは辛い。
ブラジル行きとまでいかないが、グラナダ行きも相当の時間がかかる。
パリで一泊して、翌日、マドリッド経由でグラナダ。
これしかないなと思い、条件を出し、パリのホテルはこちら持ちで、他は、映画祭が持つなら行きますとの結論を出す。
こちらの要望が通り、組まれた日程のメールが届く。
あとは、飛行機に乗るだけだ。
翌日の朝、ホテル前から出発する早朝のリムジンバスで、成田へ。
このリムジンバスは、とても便利だ。
東京に来たとき、普段は事務所に寝泊まりしているのだが、ここに来れば、成田行きのリムジンバスに乗れるんだということを初めて知った。
事務所からこのホテルまでは、歩いて5分足らず。
宿泊客だけが利用できるというわけではないだろう。
だから、これからは、これを利用しようと思う。
そんなわけで、リムジンバスに乗って、成田へ。
成田から、パリへ。
この十数年、パリにはなんだかんだと年に二度は行っているので、別に困ることはない。
荷物を取り出して、税関を抜けて、地下のタクシー乗り場へ。
宿までもスムーズに行けたのだが、ところがだ。
今回は、泊まるホテルがどうもいけない。
昔貧乏旅行をしていた時のことを思い出して、ひどく暗い気分になってしまった。
いつもBOOKING.COMで予約しているのだが、こんなところは久しぶりだ。
ここで、一泊か…と、ため息が出てしまう。
本当だったら変えてしまうのだが、
「一泊だけだから」
と奥さんが言うので、ここに泊まることにした。
ホテルの名前は書かないけど、カルチェラタンの近くで、場所はいいが、あまりお勧めはしない。
ぶらぶら歩いた挙句、夕飯は、以前マッキーが教えてくれた中華レストランでとる。
店に入るまで、ここの名物が、ワンタンメンだったことをすっかり忘れていたが、隣の若者が大盛りのワンタンメンを食べていたので、思いだし、それを注文する。
ワンタンメンと、チャーハンと、あと一品。
何を食べたか思い出せない。何だったろう? 春巻きではなかったような気がするし、大好きな酢豚はメニューにはなかったんだから、やはり、春巻きだったのか?
それにデキャンタのワイン。
この店の料理はどれも美味しいし、大盛りで大変結構なのだが、店員の質の悪さには毎度、呆れ返る。
パリで繁盛している店とはこうものか、とにかく客を客とも思わない。
でも、もう、二度と来ないのだ。
それも見過ごそう。
店を出て、カフェに入り、道行く人を眺める。
それでも、時差ぼけが始まっているようで、頭がぼうーっとしている。
雲の上を歩いているようだ。
早々にホテルに帰って、寝る。
翌日は、早起きした。
とは言え町を散歩なんてことはせず、地下の食堂で朝食をとり、荷造りをし、それらをホテルに預けて、散歩。
ノートルダムに行くという奥さんを見送り、ボクは、カフェで、コーヒー。
それからまた、カルチェラタンへ行き、イタリアンの店で、パスタ、ミネストローネ、ピザなど。
ホテルに戻り、タクシーを呼んで、オルリー空港へ。
オルリーは、初めてパリに来たときに降り立った空港だ。
以来、何度か利用したが、もう20年以上も利用していないので、本当に懐かしい。
空港の建物を眺めて、ゴダールの映画のことを思い出した。
「あそこを背景に、ジャン・ピェール・メルヴィルが記者団に囲まれて…のシーンがあるんだけど。うん、そうだった。トリュフォーの『柔らかい肌』でも、ここで撮影されたシーンがあったな」
などと独り言。
そうこうしているうちに出発。
マドリッドでトランジェットして、グラナダへ。
深夜に到着。
迎えの映画祭スタッフと合流、ホテルへ。
チェックインして、近くのレストランへ。
十二時を回っているというのに、まだ空いている。
もっとも、他の店はみんな閉まっていて、空いてるのは、ここだけ。
「スペインでは大体、十時から夕飯なんですよ」
などと通訳の人が言うから、
「それじゃ、ほとんどの店は、二時間ぐらいしか働かないということ?」
と訊くと、返答に窮したらしく、押し黙ってしまう。
疲れていて、胃の具合も良くないので、あまり食べられず、早々に退散。
ホテルの部屋で、バタン、キュー。
いまだに目が回っている。
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