翌日は、午後から幾つかインタビューが入っていて、まずは、ラジオ局に行って、マドリッドとの電話インタビュー。
映画祭ディレクターのホセ氏たちと合流。
審査委員の一人、エジプト人とも会う。
ボクの作品もコンペ出品なので、審査員と話すのは、どうも気が引ける。
向うも同様らしく、お互い、あいさつ程度で済ます。
まだこちらでは、『春との旅』を観た人はいないようなので、少し心配になる。
インタビューと言っても、まだ映画を観てない人と話すのは辛い。
「プレス試写はやらないの?」
と訊くと、予算の都合で出来ないのだと言う。
「それは困ったな。それじゃ、映画を観てからの取材と言うことにしてくれませんか」
と映画祭のプレスに話してもらうが、通訳は、
「でも、そうなると、明日の夜中と言うことになりますよ。明後日は、早朝に出なくちゃならないんですから、寝られなくなってしまう」
「それでもいいから、映画を観終わった後にしてください」
強引に言うが、難しい様子だ。
二本の取材を受ける。
どちらも、DVDで映画は観たと言っていたが、本当かどうかは怪しい。
仕方ない。
ま、良いか、と言うことで、軽く、晩御飯。
そのまま、オープニング会場へ。
深夜にバルで飲む。
サングリアがうまい!!
翌日は、アルハンブラツアーが映画祭によって組まれていて、バスがでるという。
ボクは、体調が優れず辞退。
奥さんが通訳らと行く。
観光気分なのが腹立たしいが、ま、仕方ない。
映画祭に自作の映画が掛かるとやはり落ち着かない。
ライブの日とあまり変わらず、気が立っている。
あまり気にしてないそぶりはしているが、内心は、そうでもないのか? とにかく、何も手につかないのがいつものことだ。
それでも、ボクは、ホテルで午前中、寝て過ごす。
昼過ぎになって、奥さんたちが戻ってきて昼食。
一杯始まった途端に、爆発。
あれこれと文句を言い、早々に退散。
気分をなだめて、夜を待つ。
夕飯時には、気分も回復、取材も受けて、いざ、舞台挨拶へ。
日本の震災についての一文を読み上げる。
これは、海外の映画祭に『春との旅』が掛かった時に、必ず読み上げてもらうように書いたもので、初めはどこかの映画祭の依頼で文にしたものだ。
隣で、それをスペイン語で訳していく。
うまくセンテンスが区切れて、ホッとした途端、凄い拍手。
オープニングでも、司会の俳優が津波について触れていたが、やはり、日本の震災についての報道は、ここグラナダでも大きく取り上げられていたようで、お客さんの関心は、そこに集中しているようだ。
映画が始まり、ボクはロビーでまた、インタビュー。
終わるのを待って、映画祭につきものの、QAが始まる。
立ったまま、一時間半はきつい。
外に出たら、午前一時を回っていた。
へとへとで、ホテルへ。
そして、二時間ほど眠ったか眠らないかで、起床の時間。
朝飯は、日本から持ってきたカップ蕎麦。
スーツケースを持ってロビーに出ると、送りの車がない。
待てど暮らせど来ないのだ。
仕方がない、タクシーを止めて、慌てて空港へ。
スーツケースを預けて、飛行機に飛び乗る。
それでも良かったのは、スーツケースがそのまま、成田に行くということだ。
重いスーツケースを持って、パリのオルリー空港から、CDGまでは辛い。しかも、8時間も待ち時間があるのだ!!
しかし、その心配もとけて一安心して、マドリッド乗り換えで、パリへ。
オルリー空港から電車でパリに入り、市内で数時間を過ごしてからCDG空港へ行くことにした。
で、パリで昼食を摂って、CDGに着いたのだが、JALの人が、
「荷物はどうされました?」
と訊くから、
「そのまま、成田に行くことになってます」
と、手荷物の預かり札を見せると、
「オルリーからこちらまでは、ご自分で運んでいただかないと」
などと言う。
「だって、ここに成田って書いてあるじゃないですか」
「でも、オルリーからは、便がないのです」
「JALとイベリア航空は、同じグループなんでしょ?」
「ええ、同じ、ONE WAYのグループですが、そういう提携はしていません」
「そんなこと知るかよ! どんな提携をしてるかなんて、ボクらがわかるわけがないでしょう!」
「ええ、でも…」
「どうしたらいいんです」
「取りに行くしか方法はありませんね」
「今から、オルリーへ? 間に合いますか」
「多分、間に合いませんね。ですから、飛行機はキャンセルされて、深夜の便にお乗りになったらいかがでしょう」
「成田に着いたら、そのまま、北京に入る予定なんです」
「そうすると、北京の便も、キャンセルされて予約を取り直さないと…」
これは大変なことになってしまった。
どうしていいかわからない。
JALは、もう、逃げ腰だ。
「さあさあ、どうします?」
と煽る。
「判った。一か八か取りに行きます!!」
ボクは言い終わると直ぐ、外に飛び出して、タクシーを止めた。
「オルリーまで行って」
「オルリー? 見送りかなんかかい?」
手ぶらのボクたちを見て、運転手は首を傾げる。
「いや、荷物を取りに行くんだ。取ったら直ぐに、ここに戻ってきて、飛行機に乗らなくちゃならない」
「何時の飛行機だ?」
ボクは時間を言った。
「二時間しかないじゃないか!!」
「戻ってこれるかな」
「普通なら、片道30分で、往復、一時間てところなんだけど、渋滞があるからね。でも、出来ることはやつてみるよ!」
と頼もしい運ちゃんだ。
「頼む!!」
ボクは言って、後は運を天に任せた。
何だか、リュック・ベッソンの映画みたいになってきたぞ。そらでも飛ぶんじゃないのかな、このタクシーと思ったが、流石にパリのタクシーは、空を飛んだりはしないのだ。
それでも、渋滞を、うねうねと潜り抜けて、オルリー空港へ。
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