「名人」読了。
その前に「圓生の録音室」読む。
こちらの方がボクには面白かった。
読んでいて、圓生という人のことがようやくわかって来たようだ。
金に細かいところとか、偏屈で、意固地なところなんか、親父に似てるな。
圓生が大阪生まれだということも、初めて知った。
先代の圓生の連れ子で、先代は義父ということになるのも、知らなかった。
「ぞろっぺい」という言葉も、久しぶりに読んだ。とにかくいろんなことを思い出す本だった。
素晴らしい。
× × ×
ボクは子供の頃、叔父さんと一緒に暮らしていて、その叔父さんが浪曲と落語が好きだったので、主にラジオから流れるそれらを聴いて育った。
もちろん、叔父さんが好きだったのは、浪曲では広沢寅蔵の「清水次郎長」。天狗道場と言う素人の浪花節語りが出てきて、広沢寅蔵が評価を下すのだけど、そのどら声には、思いがけず優しさが感じられて、聴いているうちに寝入ってしまった。
落語は色々と聴いていたみたいだが、好きだったのは三遊亭圓生。圓生の人情噺を聴いていて、何度か涙を浮かべているのを目にした。それでボクは、必然的に、「清水の次郎長」と圓生落語、人情噺が好きになっていった。
とは言え、若いころは、あまり聴かなかったが、最近、しきりと聴くようになった。「圓生の録音室」を読んだのもそんな理由からだ。続けて、「名人」を読んだ。
でも、「名人」には、圓生の名前はあまり出て来ない。出て来るのは副題が示す通り、志ん生と志ん朝の親子のことだ。
ボクはなぜか、あまり志ん生が好きではなかった。何だかひどく聴きとりにくく、今思えば色気のある話ばかりのような気がして、子供だったボクにはわからなかったんだろう。その点、志ん朝の落語はテンポが速く、歯切れもいいので聴きやすかった。
「落語は圓生か志ん朝だな」
とボクは思っていた。
それは今も変わらない。
今はとりあえず、圓生の落語を聴き直そうと色々とCDとかDVDを集めている。
近いところで時間を作って、じっくりと聴いていくつもりだ。
シナリオの勉強をしている人には、落語は必須だ。真似をするんじゃなくて、体に沁み込ませるといい。話し言葉の洗練された形が落語にはあるようだ。
× × ×
医者に行く。
一昨日も医者に行ったので、飛び石で行ったことになる。
雨だったので、嫌だったが、薬も切れたので、仕方なく行くことにした。
ボクは慢性腎不全なので、透析まで、時間の問題なのだが、透析をするようになると、行き当たりばったりの海外旅行など行けなくなるし、映画の撮影も、条件が色々とついて来る。そうなったら、半分引退を覚悟しなくちゃならない。
だから今のうちに、一本でも多く映画を作っておこうと思っているが、そう思うようになった途端に、なかなかアイデアが出てこなくなってしまった。
思いつくことはたくさんあるが、疲れやすくて机に向かってシナリオを書く気力がわいてこない。
それでも、「よし! やるぞ!」となれば、書きあげられるんだろうけど、体のことを気にしていては、映画なんか作れないので、命を縮めるのを覚悟してとりかからなくちゃならない。
今までも、映画を作る度に、命を縮めて来たけれども、『バッシング』あまりからは、それをまず覚悟して、とりかかるようになった。
そうなるとなかなか映画作りも妥協が出来なくなってくる。
満足がいかない場合、自分に腹を立てる。次に、スタッフ。
先日、『愛の予感』のメイキングらしきものを編集していて、スタッフを叱っている自分の姿を観て、呆れかえってしまった。
映像には残っていないが、現場はもっとひどいものだ。
後悔はしないが、反省はしている。
でも、また、始まるんだろうなと思うと気が重くなるのも確かだ。
小心者は仕様がない。
2010年4月28日水曜日
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