横になって間もなく、草刈りの音で、寝たり起きたり。
この季節になると、この集落では毎日誰かしらが、草刈りをしている。
エンジン付きのものだからうるさいが、草を刈る人の苦労を考えれば、なんでもない。
NHKの旅番組だったかで、イギリスの田舎町が取り上げられていて、大きな鎌をかついで行く人を追うと、草刈りの講習を受けているのだという。
エンジン付きのものではなくて、両手で左右に振って草を刈るものだが、これには修練がいるらしい。
なるほど。何事も、一朝一夕にはいかないものだなと思った。
エンジン付きの草刈り機も、そう簡単に出来るものではないようだ。
怪我をする恐れがある。
電気のもののならストッパーで、深手は負わないが、エンジン付きのものは、大怪我を招く。
チェーンソーも同様だ。
しかし、この集落の人たちは、いとも簡単に操っている。
麦わら帽子を被り、手袋をして、顔には網を被っている。蜂避けだ。
今朝、この集落では、一年に一度の、合同の草刈りだったようだ。
そう言えば奥さんも、昨日から、辺りの草刈りをしていた。
ボクはと言えば、それを眺めているだけだ。
しかも訝しげに。
雑草などは仕方ないとしても白い花の咲くどくだみ草やミントなどのハーブまで刈られてしまうと、何だか、物悲しい。
しかしそうも言ってはいられない。
やはり、雑草は刈らねばなるまい。
家の裏手に、竹林がある。
この竹も、ほとんどといっていいぐらいに手入れをしていないので、生え放題で、家のすぐ近くに、竹の子が現れた。
きっと根は、家の床下まで伸びていることだろう。
その内、畳を突き破って、家の中に、竹が生えてくるかもしれない。
それでもボクは平然としている。
畳から出てくる竹があるんなら見てみたいもんだなどと屁理屈を言ってみたりする。
全く、自分でも偏屈だと思うが、そんな自分の性格を変える気にもならず、雨の中でも草刈りに励む奥さんを窓越しに眺め、奇異な生き物を見るように見ている。
「晴れより、雨の方がいいねん」
と奥さんは言う。
「その方が蜂が寄って来ないからいいねん」
と。
しかし、ボクにはどうもこの光景はいただけない。
見ようによっては、気がふれたように見える。
今日は、昼近くになると、おだやかな風が、窓から吹き込んでくるようになった。
本当に気持ちが良い。
風も、涼しい。
湿り気がない。
空は晴天とまではいかないが、これぐらいが丁度いいのかもしれない。
こちらに来て、もう随分と経つが、ようやく、何か、テンポがこちらに慣れて来たようだ。
とかなんとか言ってる間に、東京に戻る日が来てしまうのだけれども…。
今、奥さんはまた家の裏手に行き、草刈りをしている。
2010年8月5日木曜日
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