数日間、大阪で過ごした。
森繁久彌さんの特集上映があることを知って、お盆がてら奥さんの実家に世話になるとことにしたのだが、森繁の特集上映は、スケジュールの都合で、肝心の駅前シリーズや社長シリーズを観ることが出来ず、森繁がゲスト的に出演した『二百三高地』一本に留まってしまった。
しかしこの『二百三高地』が思わぬ拾いもので、DVDでも過去に発売されているようなので、もう一度観てみたいと思っている。
とにかく笠原和夫の力の籠もった脚本が見事だ。
音楽のさだまさしも、奇跡的な名曲を提供している。
「防人の詩」の歌詞、曲は、誰もが作れる歌ではない。
このひとにしか作れない。しかも、二度とは作れない歌に違いない。恐らく、さだは、笠原和夫の脚本に心打たれ、この歌を書いたに違いない。映画作りは、各パートが全力を出して、いい作品にしようと言う気概がないと成功しない。見事に、さだはその期待に応えたが、それ以上のものを残した。
歌が大ヒットしたからだ。
ほろ酔いでこの映画を観たせいか、ボクは映画の前半、少しばかりまどろんでしまった。映画館で、居眠りをするなんて何年ぶりかのことだ。外は灼熱地獄なのだから、体がほっとしたのかも知れない。映画館の中は、寒いほどで、覚醒してからは、体をさすってないと、じっとしていられないほどだった。
映画の後半は、闘いのシーンが延々と続く。
前半とは、別の映画を観ているような錯覚に陥る。
前半、ひっきりなしに出ていた、伊藤博文役の森繁の姿は、後半ぷっつりと途絶え、変わって現れるのが、仲代達矢扮する乃木希典だ。
主役がここで、時の首相から現場の指揮官へと変化する。
そして、ラストシーン。
あらゆる犠牲を払い、日ロ戦争に勝った日本。しかし、乃木希典は、天皇を前にして、報告文を読み上げるその半ばで、泣き崩れていく。
見事としか言いようのないラストシーンだ。
映画は、テロップに変わり、伊藤博文が暗殺されたことを告げ、乃木希典は妻と共に、自刃したと告げられる。
この映画の監督は、舛田利雄。製作・配給は、東映。
未見の方は、是非!
と、言う訳で、映画は、この一本で終わってしまい、食い意地がはったボクとしては、あちこちを食べ歩きしていたのだが、注文した料理のほとんどは、残さなければならず、それがまた尾を引いて、頭の中は、食べることへの興味以外はないかのように、大阪の街を彷徨い歩いていた。
それでも、頭の中には、『二百三高地』の様々なシーンが、浮かんでは消えて行き、中でも特に、仲代達矢の名演には、繰り返し、感心した。
素晴らしい俳優だ。ボクは『春との旅』で縁あってご一緒したのだが、撮影当時、ボクは仲代さんの偉大さに、まだ気づいていなかったんじゃないかと思えた。この映画を観た後、九条の商店街にある食堂で、ひとりビールを飲んでいたのだが、コップを持つ手が、震えて、治まらなかった。
いやはや。
2010年8月21日土曜日
登録:
コメントの投稿 (Atom)
10月19日に思うこと、
総裁選が大騒ぎの果てに、終わったかと思ったら、今度は、衆議院解散で、選挙だ。31日投開票だから、あまり日もない。 議員たちが、国会から引き上げる様子を見ていると、次の選挙に向けて密かに闘志を燃やしているのか、あきらめているのか、うつむき加減で、深刻な表情を浮かべている。 ...
-
仲代達矢さんとの二度目の仕事が、すすんでいる。 『日本の悲劇』と題するこの映画のシナリオを、ボクは遺書を書くような気持ちで、書き綴っていった。 とてもこれは映画にはならないだろうなあと思っていた。遺書というものは、何度も書くものではないと思うし、書き直したりもしないものなんじ...
-
知ってる人は知ってるのだが、ボクはこの映画のもとになった脚本を随分前から持ち歩いていた。キャスト欄には名前も入っていたが、実現することはなかった。 こんなことは良くあることだったが、その時は、自主制作でも作る積りでいたので、製作を中止した時は、随分と落ち込んだ。 キャスト欄に...
-
HBO製作のこのドラマ。以前にも、一度観たことがあるが、体調が優れず、ほとんどを眠って過ごした。とにかく、体力がないとドラマや映画を観ることは出来ない。体力をつけるには、とにかく食べること。それに尽きるようだ。 食欲が出てきたときには、いままで敬遠していた映画を観ることが出来る...
0 件のコメント:
コメントを投稿