2019年11月4日月曜日

映画とテレビとYOU TUBEと

長い間、映画から離れていて、YOU TUBEばかり観ていた。
それには、理由があり、ネット配信業者の作る{オリジナル作品と銘打った)映画に飽き飽きしてきた(なかには、優れたものもあるのだが)のと、「ブレイキングバッド」の全シリーズを観て以来、本当に山ほど海外ドラマを観て来たが、前者に勝るものはないと確信したからなのだが、ここにきて、また、映画に戻りつつある。

YOU TUBEでは、何人か、チャンネル登録して、見続けている人もいるが、毎日配信が、登録者を増やす条件らしく、とにかくひっきりなしに、新作が登場する。
が、さすがに、ネタが尽きたのか、同じパターンのものが多くて、配信者のキャラクターに好感を抱いたものの、飽きがきてしまった。

人気のYOU TUBERは、信じられないぐらいの金を稼いでいるらしく、六本木の方で、豪遊しているらしいが、それがYOU TUBEに出すための、仮の姿であるらしいことも、配信者自らが、言い訳めいて、言っている。
どんな私生活を送っていようと、配信者の本当の姿がどんなものであろうと、映像を糧とする人間に、私生活は関係なく、その配信者の心根は、そのまま映像に出て来ると思っている。
だから要らぬ推測はなしに、配信された映像だけを見ていればいい。
しかし、それにも、多少、飽きが来てしまった。
巧みな話術を武器にする人たちのものは、まだ見ていられるが、そうでない人たちのものを見ていても、ボクには何も感じない。

だからというわけではないが、パソコンから離れて、映画館で、映画を観ようと思い、もう随分前だが、『MI』のシリーズ最新作を観た。
久しぶりに大画面で、観たせいもあるのか、以前のシリーズより、感銘は薄かった。
躰を張って、演技するトムクルーズを称賛する人たちがいる。映画自体も、褒める人はいても、貶す人は、見当たらない。
何だか、自分の映画の観方がずれてきているのか?
批判せずに、映画をそのまま受け入れることが出来なくなっているのか?
などと、結構思い悩んでしまった。
数か月して、配信されたこの作品を見直したのだが、やはり、最初に観た時とあまり変わらない印象で、アクションシーンの出来は、悪くはないが、以前のような畳みかけるような演出がなされていないように感じた。
残念だった。
勿論ボクは、このシリーズが大好きなので、これからも旧作を含めて、何度も見直すだろうし、新作が出れば、見て行くつもりだ。

しかし、この映画を観て、また、映画館から足が遠のいてしまったことは事実だ。
とはいえ、棚に並んでいるDVDを見直す気持ちにはならない。
配信に戻り、『ブレイキングバッド』を見直したりした。

HBO製作のテレビシリーズが良さそうだと思ったのは、随分前だが、いつの間にか、AMAZON PRIME に、HBOシリーズがあることを知った。
シーズンの長いものは、以前に観ていて、いつも楽しませてもらっていたが、ミニシリーズに関しては、それが地味な作品がゆえに、あまり観ることもなかった。
では、そのミニシリーズを見てみようと思い、何本かを立て続けに観た。

どの作品も、それなりの水準に達していて、いかにHBOが懐の深いテレビ局なのかを知らされた。
これは、驚きでもあった。
もちろん大ヒットした作品があるからこういった作品も生まれて来るのだろううが、それにしてもだ。
日本では、考えられない奥の深さだ。

中でも、『TRUE DETECTIVE』の第一シーズンには、魅了された。
キャリージョージフクナガと言う監督の名も、このドラマで初めて知った。
彼の作品を追い、『ビーストオブノーネイション』を観た。
アフリカの架空の国を舞台にした、少年の話だが、久しぶりに、心に響く映画だった。

このドラマがきっかけで、また映画を観る様になった。
一本観ては、映画への希望を募らせ、また一本観ては、それがまた失望に変わりを繰り返した。
とにかく、毛嫌いしていたものも含めて、何でも観た。
今でも、見続けている。
今月から、『ターミネーター』のシリーズ最新作が公開されると知って、十数年ぶりに『T2』も観た。
まさに、血が騒いだ。
『T2』を再見したことから、ソダーバーグの『ザ・サランドマット』を、グリーングラスの『キャプテン・フィリップ』をといった具合に、映画を見続けている。

優れた映画は、媒体を選ばない。
そして、探し、掘り起こしていくものだと再確認した。
テレビドラマも同様だ。
今放送しているドラマに飽き足らないのならば、過去のドラマを観ればいい。新作ばかり追いかけても、失望を繰り返すだけだ。(勿論、そうでないドラマもあるが)

以前は、フイルムセンターやアンダーグラウンドな映画館に行かなければ、掘り起こす作業は出来なかった。
しかし、今は、違う。
配信がある。
まだまだアーカイブスとまでは言えないが、そのうち、配信が全て映像と名のつくもののアーカイブスとなっていくことを希望する。

映像が氾濫し、次々と消費されては消えて行く中で、年代やジャンルを超えて、映画、テレビ、そしてあえて加えるが、YOU TUBEと、数々の名作は、いつまでも観る側に提供していて欲しい。
配信が、ボクらに与えた影響は大きい。
配信が、消費されるだけのものであって欲しくない。
映画館やテレビが消費されつくして、消えて行こうとしている中で、ネット配信だけは、そうあってほしくない。

つらつらこんなことを書いていて、ふと窓の外を見たら、秋の日の風に揺れる木々の葉が、まるで、ジャンルノワールの映画のようだと思った。
そうだ! ジャンルノワールを観よう! そう思ったが、今では観るすべがない。



2019年11月1日金曜日

返信待ち

同じクリニックに通っていて、数か月前に転院した人がいる。
職場が定年となり、別の職場に移り、近くのクリニックに行くことにしたからだ。
今のクリニックは、通うのに一苦労する。
「いいクリニックを見つけられて、良かったですよ」
と、メッセージが届いていた。
詳細はわからないが、それは良かったなと思った。

彼が転院して、二か月ほど経ったころか、「会いませんか」と、連絡が来た。
ボクは二つ返事で、会う約束をして、日程を、そして、場所を決めた。
そこは水道橋のもつ焼き屋で、たまにボクが行くところで、当日は、彼の方が先に来ていて、ボクが来るのを待ってから、飲み物を注文した。
きちんとした人なのだ。
先に呑んでたりはしない。

二時間ほど、新しいクリニックのことや、映画のことなどを話して、お互い程よく酔っ払ったところで、別れた。
彼は、水道橋駅の西口改札を抜けて、消えて行った。
家は、国立の方なのに、一旦東京駅まで行き、坐っていくのだと言っていた。
足の指を何本か切断していて、立っているのが苦痛だからだ。

およそ、一時間半はかかる家までの道のりを頭に浮かべて、もし次に会うことがあれば、新宿か、東京駅にしようと考えていた。

それから半年後、今度は、ボクからご機嫌伺いの連絡をした。
しばらくたって、返信が来た。
「久しぶりにやりましょうかね」
と、人懐こいメッセージだった。

ボクは東京駅の中にある店を予約した。
帰りが少しでも負担にならないよう考えた。
この時は、ボクが先に到着した。
初めての店なので、様子をみたかったこともあるし、彼のことだから、待ち合わせの時間より、少し早めに来てるんじゃないかと思ったからだ。
今度は、待たせるわけにはいかない。

店について、5分ほどしたとき、メッセージが来た。
今、東京駅にいるとのことだ。
ボクは、既に店にいると返信した。
彼は、八重洲ブックセンターの袋を手に現れた。
時間つぶしに、本屋に寄っていたことが想像された。
やはり、約束の時間より早く、店の近くに来ていたのだ。

この日も二時間ほど呑んで、食べて、別れた。
別れ際に、手土産を渡れた。
高級タバコだった。
「また、近々、会いましょう。今度は、クリニックのスタッフにも声を掛けてください」
そう言って、彼は去って行った。

昨日、クリニックに行ったとき、あるスタッフの人に、彼の話をして、今度、三人で呑もうと話した。
早速、スタッフの人は、空いてる日を何日か出してくれた。
ボクは、透析を受けながら、片手でスマホを操作して、彼に、日程についてのメッセージを送った。
しかし、ベッドにいる間、返信はなかった。

着替えて、クリニックを出ようとした時、受付の人に呼び止められた。
「Nさんが、亡くなったそうです」
の受付の女性は、涙目で言った。
ボクは、耳を疑った。
なぜ、転院したクリニックに、そんな連絡が入るのか?
「警察からの電話でした」
受付の人のその言葉に、なんとなく、納得した。
自宅で亡くなっているのを警察が発見したのだ。
それで、目についた電話番号に電話した。
クリニックがどういう対応をしたのかはわからないが、奥さんを亡くし、子供たちは、みんな独立し、ローンの払い終わった家に、一人暮らししていることは、知っていた。
出社しないNさんを心配して、会社の誰かが、警察に通報したのだろう。

家に着いても、まだ信じられない気持ちだった。
人の死が、突然やって来ることは、知っている。
何度も経験しているはずの、訃報。
それがまたやってきたのだ。
ボクにとって、Nさんは、唯一の同じ病気を持つ仲間だった。
また、この先、かけがえのない友人になるはずの人だった。
その人が、一瞬で、消えてしまった。

ひょっとして冗談じゃないのかと思った。
あの人なら、やりかねないぞ。
そんな気がした。それで、スマホを手にし、メッセージを見たが、返信はなかった。
一夜、明けた今日もまだ返信はない。









10月19日に思うこと、

  総裁選が大騒ぎの果てに、終わったかと思ったら、今度は、衆議院解散で、選挙だ。31日投開票だから、あまり日もない。 議員たちが、国会から引き上げる様子を見ていると、次の選挙に向けて密かに闘志を燃やしているのか、あきらめているのか、うつむき加減で、深刻な表情を浮かべている。 ...