2014年12月5日金曜日

12/04

あっと言う間に、師走に突入した。
本当に、あっと言う間だった。特に、今年は。
今年の1月6日、ボクは、60になった。
還暦である。
気が付いたら、還暦。そんな気持ち。
そして、ボクの定期的な病院通いが始まったのも、その少し前からだった。
人生が変わった。
そのころはとっくに死んでしまっているだろう、次の年のことなんかを、ぼんやりと考えて、感慨にふけっていた。
でも、今、まだボクは生きている。
来年も、ボクは、生き続けるのかもしれない。
死ぬ兆候が、表れたはずなのに、そう簡単に殺してなるものかと、救命策を施して、ボクは、生かされている。

昨夜、家人と話した。
「そう言えば、映画の公開もなく、映画の制作もなかったのは、今年が初めてじゃなかったかな」と。
家人は、ノートを取り出して、ボクがデビュー作を作り、知人の勧めで、作った会社「モンキータウンプロダクション」の創設の頃からの年表のようなものを見て行った。
「ほんとだ」
何ページかのその年表のページを一年一年確認してから、家人が言った。
「今年が、初めて」
「だろ?」

ちょっと、戦慄した。
何をやってるんだと言う気持ちになった。
でも、それとは反対に、やっと一年、休めたと言う気持ちもあり、仕方のないことだとも思った。

一本目で、賞を貰い、二本目がカンヌで掛かって以来、一年に一本は、映画を撮ると自分に誓いを立てた。
でなければ、映画監督として生きてることにはならないと思っていた。
あくまで、映画作りは、仕事であり、事業なのだと。
とにかく企画を生んで、シナリオにし、制作する。
それも、最低、一年に一本は。

そして、それを実行に移していったはずだった。
しかし、公開まで手掛けなくてはならないボクにとって、一年に一本の映画制作は、不可能だと知った。
その年、映画を作れば、公開は早くて、次の年の、中頃になる。
全国での公開が終了するまでには、半年近くは掛かる。
幸か不幸か、大ヒットした映画は、ボクにはない。
だから、何年もその映画に引っ張られることはない。
その代わりに、自転車操業に近い。
映画を製作して、公開し、終わった途端、次の企画を考えて、シナリオにする。
どうしても、企画が浮かばない時は、書き溜めていたシナリオで、スポンサー探しをする。
スポンサーが見つからない時は、自主制作となる。
様々な不安が去来する。
果たして、これでやって行けるのか?
これで、採算がとれるのか?
深夜に、酒をがぶ飲みして、半ば、強引に、制作に踏み切る。
決めたんだから、作るんだ!
と自分に何度も言いきかせる。

キャストが決まり、スタッフが決まると、もう後には、引き返せない。
あとは、前に進めるだけだ。
他には何もない。

こんなことの繰り返しで、18年間を過ごした。
いや、17年間。
しかし、今年は、何もしていない。
今年も、あと残すところ、ひと月もない。
「今からなんて、とても無理だよな」
と、家人を前に、言葉にはしなかったものの、自分に言った。
「いや、出来るかもな」
と、カレンダーを睨む。
そのカレンダーには、仕事以外の、プライベートなことまでも書かれていて、その隙を縫って、映画を作るなんてことは出来そうもない。
でも、出来るような気持ちにもなる。
少し、興奮した。
それでも、やろう! 
というところまではいかなかった。
「うん。良いんだ、今年は。今年は、一年、休むと決めたんだから」
と、自分に念を押した。
ずっとボクなりに突っ走って来たんだ。今年一年は、休もう。頭の中を真っ新にして、来年に備えよう。

今年の初めに考えたことを、この日も、考えた。
そして、家人との話し合いは終わった。

残った、ひとりの時間はいつものように、机に向った。
アイデアの書かれたメモが散乱する机に向い、来年の事を思った。
長い間かかっていた雲が、気が付くと晴れて消えてしまっているような気がした。
この長い雲の間を、一体、どれくらいの間、歩いては立ち止まり、また、引き返しては、立ち止まり、してきたのか?
暗中模索と五里霧中と言う言葉が同時に出た。
ボクにとっては、同じ言葉のように感じた。

ツイッターで、岩田宏さんが亡くなったことを知った。
「同志たち、ごはんですよ」
の分厚い単行本のことを思い出す。
「そうだよ、まずは、ごはんですよ」
明日も、早く起きるだろう。
明日、ご飯を食べてから、来年の事を、ゆっくり考えることにしよう。






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